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2011/09/04

ドジョウは龍になれるか
国家を玩具にした時代の終わり
よく考えたら、ほんのちょっとは進んでる


久々に書きます。

野田内閣が先日誕生しました。
正直言って、民主党代表選に誰が勝っても、たいして期待できないと思っていたのですが、野田氏の民主党代表となった際の挨拶を聞いて、少し気持ちが変わりました。
挨拶の言葉が、主義主張だけにとらわれない、無理のない誠実な言葉に聞こえたからです。

少なくとも、「こうあるべき」とばかり主義主張を繰り返し、挙句の果てに、折れない相手を全て敵とみなすような、そういう人ではなさそうです。

内閣の人事配置も、(ボロクソに批評する人も多いですが、)もとより民主党に優秀な人材が少ないことは最初から分かっていたこと。
その少ない資源をいかに使うか、とても考えられた布陣になっているのではないでしょうか。
まぁ、納得いかない部分もありますが、大枠では「練りに練った采配」と言っていいように思います。

元々パワーが不足な民主党が割れていては、最初から負けは決まっています。
それをなんとかまとめなおし、「これでおそらく8割以上の力は出せるはず」という状況を作り出すために、ずいぶん悩んだのではないでしょうか。
そういう意味で、ようやく「現実的な内閣(らしいもの)」が誕生した…と私は感じました。
未成熟な集団ですし、火種はあちこちにありますが、火種を大きくしないように気を配っていけさえすれば、それなりには機能しそうです。

内閣人事発表より前に、経団連会長に挨拶に行き、協力を願い出、礼を尽くしているように見える点も、私としては期待できる点です。


野田内閣が大きな業績を残せるとは思いません。
おそらく、改革には不向きな人柄でもあるでしょう。

けれど、調整役に徹し、敵を減らし、味方を増やすだけで、淡々と現実的な政治を進められる可能性はあります。

もし野田内閣が現実的な政治を進められるのであれば、民主党に対する期待は膨らむでしょう。
大きくは膨らまなくても、「自民党だけが選択肢であった時代」から開放されるだけでもみっけものです。

かつて自民党は、政治を独占することによって、腐敗していきました。
独占者が腐敗していくのは、どの世界でも同じです。
そうした状況のさなか、小泉さんが自民党の解体を始め、自民の意識も変わるかと皆は期待しましたが、結局は大半の自民の意識は変わらず、皆は諦め、自民を捨てることを本気で考えるようになりました。
その結果が民主党の勝利でした。

民主党はマニュフェスト違反だと、野党もマスコミも攻撃していますが、私に言わせればナンセンスの極みです。
民主党はマニュフェストによって勝ったのではありません。
単に自民に期待できなくなったので、皆、仕方なく民主を選んだだけの話です。
消去法で仕方なく選んだだけなので、民主が勝ってもマニュフェストにたいして期待できないことなど、皆分かっていたはずです。

けれど、民主党は、皆が予想していた以上に青臭い集団でした。
はじめから期待はしてなくても、できない現実は、やはり失望を呼ぶのです。

自民もダメで、民主もダメ。
2大政党の時代とか、マニュフェストの時代とか、マスコミはいろんな喧伝を言ってきましたが、実際には政党政治に対する不信感はどんどん強くなっているわけです。


ついでに言えば、TVや新聞などの既存のマスコミも、どんどんダメになっていってるように見えます。
新聞の社説を読むと、こいつらは本当にバカじゃないのかと言いたくなることが多々あります。
時代錯誤と思える意見を上から目線でとくとくと語る態度が、非常に気持ち悪い。

インターネットによって、いろんな専門家の意見が読める時代です。
世代によって、立場によって、実に様々な意見があるということが、デスクに座っているだけで容易に分かります。
だとしたら、マスコミの報道は、まず様々な意見があることを伝え、それぞれのメリットとデメリットを分析し、その中から現実的なシナリオを組み立てていくべきなんです。

そうした分析を行わずにただ「こうすべき」と書くだけでは、特定の集団にだけ合わせた提灯論説にしかならない。
単にイデオロギーの押し付けをしているだけに終わってしまう。
いや、もっと甚だしい場合は、特定の立場への利益誘導にしかなっていない場合すらあります。

にもかかわらず、上っ面は公平なふりをしているから始末に悪い。
特定の意見を正論、もしくは普遍的な意見として書くのであれば、なぜそれが正論だと思うのかをきちんと解説すべきだと思うのですが、解説無しに異論は握り潰していたり。

そういう書き方は、個人の署名記事でやるならともかく、社説でやるのは間違っていると思うんですよ。
それってもう、情報操作でしょう。
とても公平な報道とは思えない。

そんなマスコミだから、皆マスコミを信用できなくなっているんです。


話を元に戻します。

私は「政治が特定の党に独占されている状況」が、最も不味い状況だと考えています。
独占は腐敗を招き寄せるからです。

もしそこそこの政党が複数あるなら、その中から優秀な政治家が生まれるチャンスが出てくるでしょう。
どういう国策が必要か、本気で考え、本音でアピールする政治家が生き残るようになるでしょう。
政治がオープンなものになるにつれ、なにより、特定の既存利権だけが幅を利かすような状況は減っていくはずです。

しかし、現時点の日本の政治は「選べる政党がない」というお寒い状況です。

もしここで、野田政権がそこそこの政治ができるようなら、以降、国民は「どの政党を選ぶか」を、これまでよりも現実的な視点で考えられるようになるでしょう。

私はそういう立場から、野田政権に期待してみようと思うようになりました。

消費税の増税に関して、私は反対の立場ですし、個々の政策に関しては賛成できないことはきっと多いと思います。

けれど、今、民主党が現実的になれないと、おそらく自民党の改革も進まないし、その他の党も、なかなか育たないと思います。

民主党は、アンチ自民である必要はありません。
与党と野党という立場にこだわらず、改革という言葉ばかりにとらわれず、まずは現実の政治をできる力を付けてほしいと思います。

野田さんの力は未知数ですが、挨拶等を見て、それができそうな数少ない一人だろうと感じました。

この印象が、どうか印象だけで終わることがありませんように。


ちなみに、リンクした記事3本は、野田内閣を比較的ポジティブに受け止めているものです。
特に「よく考えたら、ほんのちょっとは進んでる」は、ぜひ多くの方に読んでみていただきたいと思いました。

ネガティブな記事はたくさんありますが、かといって小泉以前の政治体制に戻るべきとは、とても私には思えません。
いくら不満が山積みになっていようが、今の政治体制は、未来の日本の政治のためには、通過点として必要なプロセスだろうと思います。

一気に改革が進むなんてことはありえません。
抵抗勢力も多いですし、新しいことをやろうとする側は常に未熟です。
右往左往しながら、迷走しながらでも、少しでも前に進めること。
失敗は失敗として常に反省を怠らず、率直に訂正を行えること。
政治家にも、国民にも、そうした根気が求められていると思います。

21世紀の公園で